シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
BR002。
今まで、それは俺の消したい過去の幻影のようなものだと思っていた。
だけどそれは、芹霞や緋狭姉の両親を殺し、そして芹霞までも手にかけた…忌まわしき、俺のもう1つの…現実の姿。
やはり――その事実は辛い。
無性に辛すぎる。
名誉挽回だとか贖罪だとか…そんなこと薄れるくらいに、罪悪感で自分が流されそうになる。
だけど俺の思考は…迂回路がねえのなら。
常に行くか戻るか。
前に進めねえのなら…
「如月煌」
そんな俺を見かねたのか、桜が俺をフルネームで呼んだ。
冷徹な桜の瞳に…顔を上げた俺が捕まる。
「先刻。そして今――。
お前が反応するのは"如月煌"という名前だ。
そうである以外の何者も、私達には必要がない。
芹霞さんが全て私達の言葉を代弁したから、二度は言わない。
だがあえて私から言う言葉があるとすれば。
いくら腐れど、所詮は腐れ蜜柑。
お前が何をほざいて吼えようと、
――"今更"、だ」
桜の声はやはりいつも通り淡々としていて。
本当に、桜はチビなのにクールだと思う。
だけどそうしたクールさに、
変わらず向けるその冷たい目に…
その冷たい声に…
「馬鹿なら馬鹿らしく、ぐだぐだ考えずに前だけを見てろ。
後ろは…仕方が無いから、私達が守ってやる」
俺は…心が熱くなった。
非情と名高い漆黒の鬼雷の"冷たさ"は、
熱すぎる俺にとっては心地よい温度で。
だから俺は――
「…マゾかもしれねえ」
思わず口にすると…思い切り嫌な顔をして殴られた。