シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「血色の薔薇の痣…」
桜が…太股から見えている痣を眺めていた。
「男も女も老いも若きも無関係に痣がついているのなら…その共通性、発生条件が判らない。判るのは煌の記憶の中、か…」
今在る俺の意識の中では、誰にそんな痣ついているのか見当もつかねえ。
2ヶ月前の痣の主は、"生ける屍"の少女という条件だったけれど…今回はそれともどうも様相が違う。
俺が首を刎ね、首諸共肉体消えるなんていうのは…まるで"生ける屍"だけれど。
俺が斬ったのは、生者か? 死者か?
生者でないことを願う。
俺は…制裁者(アリス)のBR002ではないから。
如月煌なのだから。
「そういえば、それ…何でお前ついたよ?」
「判らない。氷皇と…緋狭様に助けられた際に…」
「緋狭姉!!? お前、緋狭姉に助けられたのか!!?」
桜はこっくりと頷いて。
「緋狭様は…何だか判らない"何か"の制約によって動けないだけだ。根本は何1つ変わらぬ、慈悲深い方だ。
だからこそ…櫂様は決断されたのだ」
――約束、して欲しいんだ。
「櫂様なりに惑われた。しかし最期は…緋狭様に全て託された」
「で櫂は……」
「見事に…緋狭様に胸を貫かれ、芹霞さんの腕の中で絶命された」
俺は…唇を噛みしめた。
櫂。
櫂。
櫂の心を思えば胸が締め付けられそうだ。
「――…。
煌…これだけは言っておく」
桜が、俺を見上げていった。
やけに固い表情だった。
「芹霞さんの…櫂様の記憶を消したのは、
多分…玲様だ」
「玲が!!? 何でだ!!?」
桜は――
いつものような無表情な顔を、少し崩した。
「煌……」
「どうしたよ?」
「いずれ判るだろうが…
此の件に関しては…
隠したままでいたくない」
そしてすうっと深呼吸をしてから。
「芹霞さんは――
櫂様を選ばれた」
俺の時間が――
止まった。