シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

「芹霞さんに関することは変に考えすぎてぐだぐだになるのに、どうして深刻に考えねばならないことはそんなに楽天的なんだ、この男は…。

言葉が…通じない。やはり馬鹿だ。根本が馬鹿すぎる。こんな馬鹿蜜柑に少しでも…頭も成長したかと期待した私が悪い」


何やらぶつぶつと呟いて、携帯電話を取りだした。


「まずは皇城翠と接触しよう。地道な方法で行く」


しかし…相手が出ないようで、何度かかけ直している。



「出ないな…」



桜が携帯を耳に当てながら、何度目かの渋い顔をした。


「呼び出し音は鳴るんだが…」


桜がかけても出ねえなんて、向こうは何か起きているんだろうか。


普段の小猿なら、速攻飛びついてキャッキャッキャッキャと猿踊りをしているはずだ。


「監視の目があるらしい。その監視人をやりこめて、前回は電話をしてきたらしいが…また捕まってしまったのか…」


監視…。

実家にいて、監視されているのかよ。


ああ…

そんな家なら、逃げ出したくもなるわな。


監視をするとすれば…底意地悪いドドSの周涅あたりか。


氷皇と何処までもそっくりな、赤銅色に染まった男。


いたぶるのが生き甲斐のような…

怪しげな術は使うわ、体術だけでもとんでもなく強い腹立たしい男。


そして七瀬の唯一の兄貴。


皇城の中枢に居て、今は小猿の兄…現当主である雄黄の代理となって動いている、皇城家№2。


小猿曰く――

事故に逢った後、小猿の兄貴は豹変したという。


弟思いの"偉大なる"兄上は、弟を蔑む暴君と化した。

周涅による小猿や七瀬の"監禁"も、偉大なる兄貴の了承があるのだとすれば、余計小猿が不憫だ。


2人の監禁は何の為だ?

…俺達に手を貸したからか?


あいつらの善意が…あいつらの自由を拘束してるのか?


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