シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「はい『はぁはぁはぁはぁ…』


発情期の猿というものは、こんなもんかもしれねえ。

ざわついた中で、発情猿の上擦ったやべえ声が響き渡っている。


「もしも『はぁはぁはぁはぁ…』


俺と桜は顔を見合わせて、首を横に振った。


駄目だ。

興奮してる猿は使い物にならねえ。

付き合ってる暇もねえ。


ぶちっ。


桜は躊躇いもせず、通話ボタンを押した。

慣れきっている態度だ。


「さて、違う方法を…」


また携帯が鳴った。


「はい『はぁはぁはぁはぁ…』


猿の発情まだ収まらねえ。


ぶちっ。


桜が切り終わった途端に、また携帯が鳴って。


さすがの俺も、いらっときた。


「桜、俺も話せるようにしろ」


桜に…スピーカー通話にして貰い…


『はぁはぁや「見苦しく喘ぐな、発情小猿ッッ!!!」


俺は怒鳴った。


ああ、姿が見えなくとも…

電話の向こうで飛び上がってる小猿の姿が目に浮かぶ。


『わ、わわわ「俺はワンコじゃねえッッ!!!」


裏返った声音で発生音は1つのみ。

学習能力のねえ小猿にそう怒鳴ったら。


『ワンコ~。ああ、いつもの馬鹿ワンコだ!!!

正気に戻ったみたいでよかったッッ!!!』


何だそれ。


大体、俺はワンコじゃ…。


『ワンコ~、ワンコ~ッッ!!!

心配したんだからな、ワンコ~ッッ!!』


何だかよ、こんなに涙声で喜ばれると…


『よかったよ、よかった!!

ワンコ~ッッッ!!!』


ぐすっ…。


『ワンコ~、ワンコ~ッッ!!!

お帰り、ワンコ~ッッ!!!』


ぐすすっ…。



「つられて泣くなッッ!!」


桜に殴られた。

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