シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「逃亡中ということは、皇城本家ではなさそうだな。電車…なあ煌、裏でアナウンスかかっていなかったか?」


俺に聞いてきて。


「あー。"かーさきー"とか聞こえたような…」


「川崎だ、多分。神奈川から東京に来ているんだ。合流したいな。皇城翠がいれば、朱貴もきっと動く」


「七瀬の声はしなかったな。確かに、七瀬より…小猿の方が、朱貴は動く可能性は高い。けど…電話も通じねえ状況で…小猿は今何処に…」


「皇城翠が助けを求めるとすれば朱貴の所だろう。七瀬紫茉とは別ルートで向かっているのか。

"今俺は紫茉とは別方面から、広…"

あれは…朱貴と皇城翠と住む、"広尾"にある七瀬紫茉の家に向かおうとしてたんじゃないか?」


「だったら、朱貴は…七瀬の家にいるっていうのか? あそこは…周涅の家でもあるんだよな? 守備範囲内の…モロ監視下じゃねえのか?」


桜は少し考えてから。


「それでも…こちらも彼らに接触はしたい。ここからなら、広尾は近い。行くだけでも行ってみよう」


小猿達が現れるか、朱貴が本当に居るのかは判らないけれど。


周涅に対して、力にしろ言葉にしろ…

動かすことが出来るのは、小猿や七瀬や朱貴しかいねえだろう。


絶対的とはいいきれねえ。


だけど…それに頼る価値はあると思った。


そして俺達は向かった。

かつて足を踏みいれた…広尾にある七瀬の家に。


今は東京の都心部に入っている。


この距離なら、30分もあれば着くだろう。


「やっぱり…東京の何処も…暗すぎるな」


新宿だけではねえ。

通過する…繁華街であるはずの地域が、全て閑散としていた。


凄え違和感。

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