シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

そして時折ちらちらと視界に入るのは、白い服の…自警団。


「見回りだろう。見つかれば矯正施設につれられる」


「なあ、桜。矯正施設ってどんなトコよ?」


「さあ? ただ問題児が入れられる強制収監所で、出て来る時には…大人が感激して自警団を応援する程だ。鑑別所よりも強制力はあるんだろう。何処にあるかは知らないが」 


そんな施設、小さいわけねえよな。


「確かに、自警団のことは何1つ知らないな。あのEMP爆弾…万年筆も、何故姿がないのかも…」


その時視界の端に捕まえたのは、巡回中らしい自警団。

桜がささっとそちらに降りて、何やら会話を交わして戻って来た。


自警団は俺を見つけ、一礼する。


「"ガイダー"には敬意を示すシステムだ。

私の服を見て上司と思ったのだろう」


あくまで、俺の服とは違うことを強調する。


いいじゃんか…。

俺にだって頭下げてたんだから、同類なんだって。


第一俺達――…


「私は熱くもなければ、愚鈍な馬鹿蜜柑と"永遠"なんて、真っ平ごめんだッッ!!」


ぐすっ…。


「矯正施設は九段下にあるらしい。

以上。無駄話終わり」


桜、冷てえ…。


夜になればなる程活気づくはずのネオン街も…開店休業のような状況だ。

夕闇から夜に向かうこの時間、本来ならばもっと人で賑わっていいはずで。

派手な格好の男女が、香水をぷんぷんさせて入り乱れる場所。

若作りした男女と背伸びした男女が、蔓延っていた…夜の街。


少なくとも、俺の記憶の中ではそうだった。


だが現実には――

至って寂しい…闇ばかりが目立つ仮初の領域。


虚飾の灯りさえ…翳っている。

夢見ることすら叶わぬ、"現実"に切り離された寂寥の領域。


「また行きたいか、あの地域に」


桜が皮肉気に言うから、


「萎えて行く気にもならねえし。芹霞サマサマだ。桜が行きたいというのなら、"超親友"のよしみで入り口までは付きやってやるぞ?」


そう切り返すと、桜は心底嫌そうな顔をした。


"超親友"が嫌なのか、場所が嫌なのか。

そのどちらかも知れねえけれど。

…哀しいけれど。
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