シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・主役

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「お、おおおおおお姉さん。

どどどどうしてあたし、

こここんな格好なんですか!!!?」


仰天したあたしは、ぶるぶると震えながら叫んだけれど…

返ってくる声は何もなかった。


玲くんににっこり放置プレイを余儀なくされた…再び"ドナドナ"のあたしは、プロメイク術を施されても、髪もセットされても…よく鏡で確認できないままに、あっと間に衣装変え。


脅威の速度で服を剥ぎ取られ…

そして手馴れたように着せられたものは…


「何で、ウェディングドレス!!?

ねえ、何でですかッッ!!!?」


おかしい。

どう考えてもおかしい。


あたしは(嫌々)この店の宣伝隊に任命された。


そこまでは(渋々)いいとしても…

何故この衣装だ!!?


女の子なら、一度は夢見る純白のウェディングドレス姿。


だけどここは婦人服の一販売店であって、ドレスが必要な教会関連施設でも何でもないし、第一あたしに結婚予定なんてない。


あたしはまだ現役女子高生。


ゾンビだの蛆だの蝶だの、気味悪い特殊環境を何とか生き抜いてはきたけれど、あたしの基本構成は…そこいらにいるごくごく平凡な一般人、ただの"庶民"に属する。


「あの、あたし普通の洋服を着たいんですが」

「………小林、そっちの裾上げて」

「このお衣装、街に着て歩くには、目立ちすぎると思うんですが」

「宮坂、ぼさっとしない。ベールを上げて!! 髪に絡まってる。何処を見てるの、何処をッッ!!!」


目の前の――

ご機嫌が著しく斜めのお姉さんは…

あたしに崩れたケーキを置いた人だ。


さっきから、あたしに対してかなりの嫌忌な念を迸(ほとばし)らせて、無視か舌打ちしか向けてこないお姉さんは、部下にあたり散らしている。

目鼻立ちくっきり故に威圧的で迫力あるお顔だが、濃いお化粧落とせば、何処まで何が消えるか判らない、不思議なお顔。


ヒステリックな態度とは裏腹に、やることはぱっぱぱっぱと手際いい。

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