シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

ふと…思った。

頭の中まで、お子ちゃまなんだろうか。


「今…玲くんは、何歳でちゅか?


――あ、違う、

今何歳ですか?」


「はたち」


一応成人の自覚はあるらしいが、その名称の響き自体、幼児言葉のような気がしてしまうあたし。


うるうるで見遣る鳶色の瞳が、何だかあたしの母性本能をくすぐるんだ。



――…ちゃああん!!



「せりか…」


真っ赤な顔のままで、可愛い玲くんが言った。



「せきにんとって、


ぼくの…およめにきて?」



「――…は?」


口を開いたまま固まるあたしの前で、玲くんはすくりと立ち上がった。


そして玲くんは、ほったらかしのあたしの鞄を肩にかけ、あたしの手を掴むと…入ってきた奥のドアから出て行こうとする。

こういう強引さは、20歳の玲くんだ。


「あ、洋服着替えないと…」

「もらった」


貰っちゃっていいものなのか!!?


「だったら、お礼を…」


玲くんはぶんぶんと頭を横に振って、あたしの手を握って部屋から出た。


やっぱり馴染みの恋人繋ぎ。

しかもにぎにぎつき。


奥は非常階段になっているらしく、薄暗い。


「芹霞…」


玲くんが真っ赤な顔のまま、こちらを振り返って。


「ぼくをいじめないでね」

「いじめるって…どこら辺が?」


心外な。


「かわいくなりすぎて、

ぼくをとかしちゃわないでね」


はて?

玲くんは何を言っているのだろう。


あたしの頭の中は、玲くんの台詞は全てひらがなだから、意味がよく掴めない。


とりあえず、解読できた単語は"かわいい"。


「かわいい? 不細工じゃなくて?」


こっくり。


「こんな残念で絶望的なあたしなのに?」


ぶんぶん。


「いきができないほど、

すごくかわいすぎて…。

ぼく…とけちゃうよ…」


また真っ赤になってしまった玲くん。


「これいじょう…すきっておもったら、

ぼくとけてなくなっちゃう。

だから…もういじめないで?」


イマイチ、言っている意味が判らないけれど。


「ぼくの…およめにきて?」


駄目だわ、退化した玲くんの天使の笑顔にKOだ。



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