シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「"僕"を…見て欲しい…。
"僕"だけを見て欲しい…」
漆黒色。
憂いが含んだ漆黒色の…。
だけどそれは久涅ではないと、本能が叫ぶ。
だったら、今誰を思い出したんだ?
他に、そんな人はいないというのに。
「芹霞」
玲くんが、惑うあたしの…顎を手で摘んだ。
「僕だけなんだ。
結婚できる歳に達してるのは」
突然、真剣な顔でそう言い出して。
"結婚"
そうだ、玲くんは結婚しちゃうんだ。
玲くんは…それを告げようとしてるの?
どくんっ。
あれ程、教えて貰えない事に寂寥感を抱いていたはずなのに、教えて貰えると思っ途端に拒絶感を覚えるなんて。
矛盾。
結局あたしは…
玲くんに何を求めているんだろう?
玲くんの口から出てきたのは――
「僕はね――
すぐにでも…君を貰えるんだよ」
やはり、持ち上がっている結婚話でなく。
あたしを誤魔化すような…そんな言い方で。
「お芝居なんかじゃないよ、全て。
あそこでお芝居出来る程、僕は器用でもないし、そんな余裕なんてないよ。
言った言葉は全て――
……僕の本心だ」
そして――
「もっと、もっと…僕を意識してよ…。
僕は…子供じゃない」
そう言うと、顔を傾け荒々しくあたしに口付けてきた。