シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「まだ…結婚なんて、君には遠い次元の話だろう。
まだ結婚までは考えなくてもいいから…
僕に…幸せな思い出を頂戴?
一緒に…2人の思い出を作ろう?」
思い出。
あくまでもあたしは思い出。
「僕と…君だけの…」
時間がくれば忘れられるもので。
現実に留まれない、期間限定の記憶。
ひと時の夢の話のように。
「僕を…君の大切な…あの箱に入れて?
僕を…切り捨てないで…?
僕との思い出を…
儚い記憶の欠片にしないで」
夢。
そう思ったら、
心が壊れそうな程、軋んだ音をたてた。
夢。
夢。
夢。
玲くんとは…夢で終わってしまうんだろうか。
嫌だ。
そんなの嫌だ。
「上に行こうか。
今頃…焼き増ししてくれているはずだし…僕の頼んだものの結果もわかるだろうし」
玲くんは…
あたしがこんな風に思っていることに気づいていないんだろうか。
玲くんがあたしに何を求めているのかよく判らない。
あたしが玲くんに何を求めているかも判らないのに。
ただ判ることは――
ひと時で終わる関係にはなりたくないということ。
「どうしたの? また甘えっ子?」
腕にしがみついたあたしの頭を撫でてくれる優しい玲くん。
「いいよ、もっとおいで?」
我侭なのかな。
生意気なのかな。
こんな和やかな時間が、ずっと続けばいいのに。
思い出に…しないで欲しい。
そう――願うことは赦されるよね。
欲求は溜まれども…
それはどうしても言葉にはならなくて、唇を噛み締めた。
あたしは――
久遠のような言霊遣いじゃない。
言葉にしても叶わなければ、
空しいだけだから。
だから、言えなかった。