シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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「もういい…もういいから、玲くん」

「ん……」

「じっくり見るもんでもないでしょ、もういいでしょ!!」

「ん……」


玲くんが動かない。


APEX事務所フロアは薄暗く、ドアばかりが点々と拡がる…ひっそりとした空気が漂っていた。

まだまだ弱小マイナーテレビ局だからなのか、あのゆんゆんを配信する特殊テレビ局だからなのか、あたしが思っていたよりも、かなり矮小で質素で、華のマスコミ業界に憧れる新卒大学生などは…イメージ相違で即退職していきそうな雰囲気。


だがビルの建造自体は、最近出来たものなのか凄く新しく、造りはシンプルながらも…どうでもいい処に意味不明な曲線があったりと、それなりに近代的に見え、ぴかぴかしている。

これだけ見たら、最新設備が整う最新鋭テレビ局のようにも思えるが、


――まだまだ。最低限の設備しかないね。テレビ局というより、下請けの編集会社みたいなものだね。


更に上階のスタジオが、使われることなく閑古鳥らしい。


あたしは…スタジオ下の事務所に居る。


APEXの事務所に入ると、玲くんが頼んでいるらしい"何か"はまだ出来上がっていないということで、見る処殆ど毛むくじゃらの怪しいクマ男に連れられて、


――はいよ、ご希望通り。


編集室のような…機械ばかりの部屋に連れられた。


――あんたなら、使い方判るな、きっと。ちょっと此処で待っててくれ。準備が出来たら呼びに来るから。


玲くんは手馴れた動作で機械を動かして。

そして大画面には、あたしのウェディングドレス姿。


「玲くん…もう止めてよ」

「ん……」


恥ずかしくて見れたものじゃない。
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