シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
・映像 櫂Side
櫂Side
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「妙な処で出会うな、娘」
ドアが開かれる直前、飛びつくように猛速度でキーボードを叩いていた遠坂が、最後に思い切り大きな音を響かせてキーを叩くと同時に、俺を蹴飛ばし後ろ向きに四つん這いにさせた。
"こんな"格好でなければ、素人の足蹴りなどすんなりかわせたものを、俺は慣れぬ"裾"にひっかかり転倒してしまった。
そう、これは事故。
その直後、ドアが開かれ…久涅の声がしたんだ。
背中越しに聞こえる…次第に大きくなる靴音。
「まだくたばってはいなかったか。
何故此処にいる、娘」
久涅が含んだような笑いを遠坂に向けているのが判った。
俺は…出来るだけ気配を殺して、
浅い呼吸を繰り返した。
不本意ながら――。
「その節はどうも。海に落ちてゆらりゆられて"約束の地(カナン)"で保護された。それがボクがここに居る理由」
「……。本当に…それが理由か?」
「それ以外の何をお求めなんだい!! 紫堂の命を奪っておいて、今度はボクの命までご所望か!!?」
言われる前に、俺の名前を出す。
先手を打つことで、突発的な"危機"を回避しようとしているのか。
遠坂の声が上擦っているのが判る。
元来遠坂という女は、演技が出来ない性質だ。
嘘をつく時、或いは何かを企てる時、
それは必ず表情やら言葉やらに顕著に表れる。
「君こそ何で此処にいるんだいッッ!!!」
「お前に…答える義理はない」
こつ、こつ、こつ。
久涅は間違いなく…
遠坂の後に居る俺の元に近付いてきている。
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「妙な処で出会うな、娘」
ドアが開かれる直前、飛びつくように猛速度でキーボードを叩いていた遠坂が、最後に思い切り大きな音を響かせてキーを叩くと同時に、俺を蹴飛ばし後ろ向きに四つん這いにさせた。
"こんな"格好でなければ、素人の足蹴りなどすんなりかわせたものを、俺は慣れぬ"裾"にひっかかり転倒してしまった。
そう、これは事故。
その直後、ドアが開かれ…久涅の声がしたんだ。
背中越しに聞こえる…次第に大きくなる靴音。
「まだくたばってはいなかったか。
何故此処にいる、娘」
久涅が含んだような笑いを遠坂に向けているのが判った。
俺は…出来るだけ気配を殺して、
浅い呼吸を繰り返した。
不本意ながら――。
「その節はどうも。海に落ちてゆらりゆられて"約束の地(カナン)"で保護された。それがボクがここに居る理由」
「……。本当に…それが理由か?」
「それ以外の何をお求めなんだい!! 紫堂の命を奪っておいて、今度はボクの命までご所望か!!?」
言われる前に、俺の名前を出す。
先手を打つことで、突発的な"危機"を回避しようとしているのか。
遠坂の声が上擦っているのが判る。
元来遠坂という女は、演技が出来ない性質だ。
嘘をつく時、或いは何かを企てる時、
それは必ず表情やら言葉やらに顕著に表れる。
「君こそ何で此処にいるんだいッッ!!!」
「お前に…答える義理はない」
こつ、こつ、こつ。
久涅は間違いなく…
遠坂の後に居る俺の元に近付いてきている。