シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

細められた久涅の瞳が…


「お前…その手首…」


俺の下に向けられた。



久涅の視線の先には――

芹霞に巻かれた赤い布。


やばい。

これは身元証明のようなものだ。



視界の端で――

見開かれたままの遠坂の目が、更に大きく開いた。

遠坂、お前何なんだよ、何かに憑かれたか!!?


目が真っ赤に充血して、本当に怖い。


どうする?

此処をどう切り抜ける?



「お前は誰だ?

まさか――」


俺は言葉が出ず、かといってどんな身振り手振りが通じるというのか。

汗だけが滲み出る。


「もしや貴様――」


考えろ。

考えろ。


考えるんだ!!!



その時――


「故人が生前大切にしていた遺物をボクが必死に掴んで、"約束の地(カナン)"に来たっていいだろう!!!?」


遠坂が叫んだ。


「紫堂の死体は上がったんだろう!!?

その手首に、布はついていたのか!!?」


俺の死体が――

あがった?


遠坂や…久遠の計らいか?


返事をしない久涅を察するに、その"俺の偽物"は…手首には何も巻いていなかったらしい。
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