シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「あんなに…皆の前で、無残に逝ってしまった紫堂の無念さ思ったら、せめて同じ面影を持つ"彼女"に紫堂の想いを括り付けたっていいだろう!!?」
涙を流しながら遠坂が叫ぶ。
ぼろぼろ、ぼろぼろ。
…読めた。
遠坂が目を見開いていたのは…
嘘泣きをする為だ。
ここまで目を真っ赤にさせて涙を零せば…迫真の"演技"に見える。
「その子は口が利けないんだ!!!
数週間前"約束の地(カナン)"で放浪していたのを、久遠が拾ってここの屋敷の掃除をさせている女給仕(メイド)だ!!!
ボク達が"約束の地(カナン)"を去った直後、彼女は此処で住み込んで働いて居る!!! 彼女に嫌疑をかけるなッッ!!!」
しかし――
少々演技に熱が入りすぎた。
「何故…久遠が、あいつに似ている女を拾うって?」
久遠という名前に、久涅は疑いを持ってしまったようだ。
「あいつを毛嫌いする久遠が、そんな慈悲心など持つはずもない」
そうだ。
「持つならば…
"約束の地(カナン)"にあいつが隠されていてもおかしくない可能性が出るということになる」
「なななな!!! だから紫堂は死体が…」
「そんなもの…幾らでも用意出来る。死亡時期があいつと同じであっても、死ぬということを見越していたならば、相応のものを"仕込む"ことぐらい出来るはずだ」
中々…だ、久涅。
仕込んだのは俺でないにしても…
冷静な判断力は中々だ。
この男は…俺が死んだということを全面的には信じていない。
「見ただろう!!? 紫堂の死に様を!!!
聞いてたろう、神崎の泣声を!!!」
芹霞…。
思えば…胸が苦しくなる。
「娘、此処は"約束の地(カナン)"。
死人返しの力を持つ、久遠の居る土地だ」
「!!! 先刻言ってただろう、久遠が!!
久遠はあんなに紫堂を毛嫌いしてたの見たろう!!?」
俺は…心で舌打ちをする。
遠坂…。
「何故、知ってる、娘」
「!!!!」
遠坂は…失態に気づいたらしい。
此処で監視していました、と言う訳にもいくまい。
何故だと聞かれて、切り抜けられるような余裕は遠坂にはない。
ああ、俺に…言葉が話せたら。