シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「矯正施設とは…どんなものなんだ?」
私は…少年院のようなものを想像していたけれど、此処まで表情を壊して自警団となりえるのなら、矯正という目的自体不可思議すぎる。
矯正された子供を見て大人は喜んでいたと聞いたが、本当にこんな顔をして戻ってきた子供を見て、大人は喜べるものなのだろうか。
そして今――
その子供が、大人を取り締まる側にいる。
「黄幡会は、何をしようとしてる!!!」
ぎりと更に腕に力を入れて締め上げると。
少年は万年筆を自分の口の中に突っ込んだんだ。
「!!!?」
嫌な予感に、反射的に飛び退いた私。
同時に――
「爆発!!!?」
男が肉片となって爆発した。
「――ちっ!!! 自爆か!!!」
処罰対象とされた男は、口から泡を出して気絶してしまったようで、煌は面倒臭そうに地面に放った。
「きな臭いな」
褐色の瞳が、すっと細められる。
「黄幡会は恐怖政治でも始めるつもりか? 東京新条例など作らせて…"来たるべき刻"に何を…」
そして煌は口を噤んだ。
「"エディター"…」
呟くようにその単語を口にした煌は、私に目を合わせた。
「七瀬と潜った際、確か"はつじょうれい"に…」
「"はつじょうれい"?」
初条令?
どんなものだ?
「ああ、発情したアホの子玲の"発情玲"…って、そんな怒るなよ、桜!!! 本当なんだって。にこにこしながら玲がそりゃあもうがつがつ…」
「玲様を侮辱するなッッ!!!
お前とは違うんだッッ!!!」
私は怒りの鉄拳を喰らわす。
「侮辱っていうか…
身体は玲で心は俺だったから…」
ぴたり。
私は動きを止めて。
「それなら仕方が無いな。中身が万年発情犬のお前なら、どんな女にでも襲いかかって盛りまくりそうだ」
「おいッッ!!! そこですんなり納得するなよッッ!!!
俺は禁欲中なんだってば!!!
見境なく行く昔の俺じゃねえんだよ」
発情犬の事情など知るか。
過去の行いが物を言う。