シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ああ、それで"エディター"が何だって?」
ぎゃあぎゃあまだほざく煌が煩くて、私は話題を戻した。
「ああそうだ。"エディター"がさ、玲に拘っていたろう? 王子様って。それ…心を見た七瀬曰く"夢の国"だか"楽園"だかに行くのに必要らしいんだ。因(ちな)みにアホの子玲を手に入れた本人も…」
――サンドリオン…ああ、これで私も楽園に行ける。
「サンドリオンって…七不思議のサンドリオン?」
「かどうかの確証はもてねえけど、その楽園…"来るべき刻"に関係ねえんだろうか」
「え?」
「何処かに既にある楽園に行く為に王子様が必要だというよりも、王子様を手に入れたというあの女の喜悦が、自分も"その刻"になれば楽園に行ける"許可証"を手に入れたから幸せが約束されたと安堵してたように思えたんだ、今考えるとさ。ううっ…難しいな、説明が」
煌は難しい顔をして頭をがしがしと掻く。
「夢の国という楽園は、その時期じゃないと入口は開かなくて、そして開いても王子様がいなければ用を足さない…と?」
「ん…まあ、そんなとこ。
そう考えると…何だかシンデレラみたいだよな。って、元々サンドリオンっていうのはシンデレラだったっけか」
「ああ。確かに…舞踏会という時間はその時間しか開いておらず、その舞踏会にシンデレラが行ったとしても、王子様に会えねばシンデレラストーリー…幸せ話にはなりえないが…」
「黄幡会と自警団が関係あってさ、"来たるべき刻"がキーワードになるんだろ? だったら"エディター"の戯れ言だって、世迷い言と片付けるよりは…"何か"前提となる土壌があったと考えてもおかしくないだろ?」
煌にしては――
中々のコトを言い出したと思う。
"エディター"
彼女は表舞台から引いたのだろうか。
動きがない今、それすらよく判らない。
が、引いたとするのは、俄に信じがたい。
「"エディター"が"ディレクター"たる計都の脚本を彩るもので、それにドラゴンヘッド…羅侯(ラゴウ)をも含まれるのだとしたら…?」
その時だ。
「なあ…なんだこの声…。
………。
………?
………!!!
また…
また来やがった、あの画面の音!!!」
煌が再び耳を押さえて叫んだのは。