シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
そして邂逅する犬と猿。



「おおお、小ざ…るおお!!!」

「わ、ワン…ぐごおおお!!!」



両手を広げて互いを受け入れようとする2組の目は、再会できた感動にうるうるで…それも突如獣のように唸り声をあげて両手を耳に抑える。

両膝を完全に地面につき、変形的四つん這い状態になりながらも、手を伸せば届く至近距離にいる。

更には真っ正面で相対しているのに、思ったように話せないし、動けないらしい。

近くて遠いもどかしい距離に見える。


傍観に徹していれば…コメディみたいでそれなりに面白い。


当人達は酷く辛そうだが。


「お前もお…とぉぉぉ!!!」

「ワンコもお…とぉぉ!!!」


音のことを言いたいのだろう。


畜生コンビは本能で言葉の意味を悟ったらしく、ギギギと軋んだ音でも響かせそうな程、ぎこちない動きを見せて、2人…2匹は同じ方向を向いた。



やはり――

赤坂だ。


そしてその方面は…



「サカスか…らぁぁぁぁぁ!!!」



小猿が言った。



サカス…赤坂サカスのことか!!?



「《妖魔》ああああ!!!」



これは――

《妖魔》…姿なきものの仕業だというのか!!?



「翠、お前術は!!!? 式神でもいい!!」

私の裂岩糸はいまだ顕現出来ないというのなら。


皇城翠は両手で両耳を押さえたまま地面に突っ伏して。



「無理ぃぃぃぃぃ!!!」


符呪を取出すことすら出来ないらしい。



「「ぬおおおおお!!!」」


悶える犬と猿。



仕方が無く私は――

2匹を引き摺るようにして連れて…かなりの速度で広尾を目指して駆けた。



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