シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「玲くん、かかかかか」
「うん。あの"約束の地(カナン)"だね」
「玲くん、くくくくく」
「うん、あの久遠がいる"約束の地(カナン)"だね」
「玲くん、ゆゆゆゆゆ」
「うん、久遠がいる、今は遊園地になった"約束の地(カナン)"のことだろうね」
「――NO!!!!!」
芹霞の顔がムンクの叫びになった。
わざわざあの氷皇が出してきた"カナン"の単語。
"約束の地(カナン)"。
それ以外はありえない。
「一体どう危険なのか・・・」
"約束の地(カナン)"には久遠達以外にも、櫂も由香ちゃんもいるんだ。
誰によるどんな標的にされたのかは判らないけれど、安全な子供の楽園だったはずの場所の危険性が高まったのだとしたら、それは僕達が影響しているように思えて仕方がないんだ。
――約束、して欲しいんだ。
何か…感付かれているのだろうか。
"約束の地(カナン)"は、生死の理を逆転出来る男が、死者を生きながらさせている特殊都市。
その意味が判る者にとっては、脅威でしかなく。
"約束の地(カナン)"の攻撃は、僕達への牽制…見せしめなんだろうか。
その為に…生に溢れて再出発を図っているあの土地が、再び利用されるのだろうか。
「やだやだやだ!!! 何とかしようよ、玲くん!!!」
危険に晒されるということを、久遠や櫂は知っているのだろうか。
「玲くん、久遠に連絡…」
僕の携帯は密やかにチップが取り付けられ、通話内容を始めとして、僕の行動は監視されているはずだ。
生家から監視されているのは、皇城の次男だけではない。
外せないわけではないんだ。
ただ、外せば余計な嫌疑をかけられるから、そのままにしているだけ。
「玲くん、久遠に…」
芹霞に急かされる前に、僕は編集室にある電話の外線で、久遠の家に電話をかけていた。