シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「"ah~bikkuribikkuri"って判らないよね…」
芹霞が嘆く。
びっくり…。
氷皇は、何でそんな言葉を用いたんだ?
びっくり要素は何もないじゃないか。
しかし…氷皇の言葉は必然だとしたら、必ず意味はあるはずで。
見れば見るほど腹立たしく、それなのにこうして何度も読み返す羽目になるのが口惜しくて仕方がない。
更に桜が預かっているらしい新たな別の手紙の存在も、ご丁寧にも示唆してくれて。
知らぬで通させる気はないらしい。
桜、僕いらないよ。
燃やしちゃってね?
考えてみれば――
氷皇の手紙が送られるのは…
何故か僕の頻度が一番高いんだ。
どうして僕なんだ?
きっと僕が嫌がっているのを見越しているのだろうけれど。
そこにはっきりと悪意を感じるけれど。
むしろ感じるのは、悪意以外の何物でもないけれど。
彼を嫌がっているのは僕だけではないんだ。
別に僕は昔から氷皇と交流があったわけではなく、友好関係など築いていないし、これからも築きたいとも思わない。
僅かなりとも心を開いた覚えもないし開く気もない。
出来れば放って置いて貰いたいのに、何故かいつも僕に届く青い手紙。
それに今回、何でこんなに矢継ぎ早に送ってくるんだ?
僕の"お試し"を邪魔しているとしか思えない。
更に"優勝"まで判っているなんて…。
何処で見ていたんだ?
S.S.Aでアオ色に染まった卑猥な刺客はいたけれど、氷皇自体の気配はなかった。
いや…いたとしても僕では五皇の気配は掴めないか。
それとも…全ては計算の内?
僕は誘導されていたの?
今更ながら――
僕は氷皇の手の平に転がされ、いい様に操られている気がした。
だからこそ、尚一層腹立たしく。
「びっくりねえ…びっくり」
隣では芹霞が唸っている。
「玲くんが…切なさ担当だったことかなあ。てっきり玲くんは、お色気担当だと思ってたから」
「え、そこ…びっくりすること?」
「え、そこ…びっくりしないとこ?」
何だか…悲しいや。
――AHAHAHAHA~.
くそっ、アオの笑いが聞こえてくる。