シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ああ、三沢さんごめんね。そのバタリアン…いやその彼女、どうやって倒したの?」
「ああ、また俺が藻掻いて機械にぶちあたった時、周波数を制御するレバーに触れてしまったんだ。途端、彼女は動かなくなった」
「式神にも有効な…周波数があるのか」
「式神?」
三沢さんが、細い眼を益々細めた。
僕は"高慢"な彼女は、使い魔たる式神だと結論していた。
蛆ではなくゾンビ化しているのは、初めてのことだったけれど。
「お前さん達、陰陽道…皇城と何か関わりがあるのか?」
そして何かに思い至ったらしく、1人頷き始めた。
「ああ、2ヶ月前だな。俺はお前さんと共に、2ヶ月前の東京の"真実"…表向き大災害と片付けられた"もの"の情報操作をした仲だ。あの時、皇城も動いていたのを知ったんだな。……え、知らなかったのか? あ、ああ…皇城家№2の男が指揮を取り、集団で何かをしていたらしいんだが、深層は闇の中。お前さんでも耳に入らなかったのは、皇城側の情報操作が優れていたのだろう」
僕は思い出す。
かつて皇城翠は、2ヶ月前の"生ける屍"は、《妖魔》だとかいうものに侵蝕された人間の末期だと語った。
《妖魔》祓いの皇城家。
2月前に動いていたのは…単純に"生ける屍"を滅する為だけのものだったのだろうか。他に何か"仕込んで"いたのではなかろうか。
そんな疑念が湧く。
「そういえば…
皇城家現当主は…かなり悪評高いな」
三沢さんは言った。
「今までは崇め奉られるほどの人徳がある人物だったのに、親父さんである"御前"が死んでからは…親父さんのやり方を踏襲しているらしい」
「御前が死んだの…知っているんだ?」
皇城翠が聞けば驚きそうだ。
「そりゃあ、俺にも皇城側に繋がる色々なルートがあるからよ」
その時、
「……ねえ、何か…建物揺れてない?」
芹霞が僕の腕を揺すった。