シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
久遠には判るまい。
肩書きの権威など、ただ1つの目的の為だけに存在する。
芹霞を守る為。
それ故の次期当主だということは、久遠には判るまい。
それが俺なりの…芹霞の守り方。
久遠だけにしかない芹霞との思い出があるように、
俺だって…俺だけにしかない芹霞との思い出があるんだ。
「だけど1つだけ判ることは。
あの紫堂玲がお前を裏切ることはない。
だとすれば、紫堂玲の行動もまた…
お前の策略のうちか」
聡い男は、自分勝手に結論づけて薄く笑っていた。
「久遠様。紫堂櫂をいかが致しましょうか」
白い修道服を着た蓮が頭を下げる。
陽斗と酷似した、金髪の女。
金の瞳は…
――ぎゃははははは!!!
芹霞を生身に還した陽斗と同じもの。
「どうせ…目覚めたばかりでまともに身体も動けないことだろうし。ほうっておけよ。体力回復なんてオレ知らないし。そこまでする程お人よしじゃないし。動けるようになれば動くだろう」
興味がなくなったといわんばかりに、瑠璃色に変わった瞳。
「お前は蘇ったとはいえ…
丸5日…お前はこの世にはいなかったのは事実。
声ぐらいの代償ですんだのは、奇跡だと思え。
四肢が使い物にならなくても、決してオレを恨むなよ?」
手をひらひらと振って、久遠は部屋を背にする。