シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「それは、本当にお前の持ち物か?」
「は!!? 周涅が居ない時に奪い返した、正真正銘の俺の鏡だ!! ちゃんと北斗七星もあるし」
その時、桜が一歩前に足を進めて。
「周涅の手にあったのなら、それは…疑わしいことじゃないか」
珍しく桜と意見が一致したようだ。
馬鹿な俺としては、頭のいい桜と同意見だということが目茶苦茶嬉しい。
「動物的勘に救われるとは、私も落ちたものだ」
喜ぶ俺とは対照的に、何かをぶつぶつ言いながら、何故か桜は忌々しげな顔で俺を睨み付けるけれど。
多分…桜も思っているはずなんだ。
何か、おかしいと。
そして――再び鏡に目を向け走査していた桜の目が、"何か"に気づいたかのように僅かに見開いた。
「皇城翠。その朱貴は罠だ」
今度ははっきりと言い切った。
「"それ"に触れればお前は捕まり…また本家に連れ戻される。或いは…私達を攻撃してくる。どちらにしろ、悪い結果しか生み出さない。
その鏡は…周涅がわざとお前に盗ませたものだ」
「は?」
周涅なら。
玲を破談にする為に、俺と桜が動き…より効果的な工作をする為に小猿や朱貴に接触すると見越していたって不思議ではない。
更に今、俺と桜は顕現出来ない状態。
小猿は…まだ未熟。
3人が集まっても辟易する事態を用意していてもおかしくねえ。
「…その鏡の北斗七星、よく見てみろ。何かおかしくないか?」
桜が顎で促した。
小猿の持つ鏡は確かに柄杓型だけれど、
「向きが違う!!!?」
小猿より先に興奮したように俺が叫ぶと、桜が鼻で笑う。
「犬でも判るような"証拠"を刻むとは。とことん馬鹿にされてるな」