シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
小猿は――
究極の選択を迫られているのだろう。
目の前で"罠"だと叫ぶ俺達は、真実を映すという鏡には映っておらず…今まで小猿の真実の目となった鏡に映っているのは朱貴のみ。
朱貴の"気"の真偽を掴めないのが、未熟なのか違う理由なのか。
だからこそ真偽を鏡に託せど、それを"反転した鏡"だと叫ぶのが俺達である限り、何を真実の拠り所にしていいか完璧に判らなくなっている。
自分の何処までを信用していいか判らない…自己懐疑に陥ってるだろう。
だとしたら。
「小猿。お前…自分の姿を鏡で映して見ろ!!!」
小猿は素直に俺に従う。
そんなに素直なら、信じてくれればいいのに。
信じたい気はあるらしいのが、ちょっぴり…嬉しい。
「これは!!!!!」
「どうだ、小猿!!!」
小猿は真っ青な顔をして――
俺達の元に走ってきた。
「疑って悪かったワンコ!!!」
「映って…なかったんだな!!?」
こくこくと小猿は首振り人形のように頷き――
「畜生、何だよこの鏡は!!!!」
今度は真っ赤になって憤怒の形相で、
バリーーーーン。
鏡を床に叩き付けて壊した。
途端。
「「「!!!!?」」」
俺達の視界がぐにゃりと歪み――
色が…反転したんだ。
白から――黒へと。
そして漆黒色が固定化し、俺達は警戒に周囲を伺えば。
パンパンパン。
やる気のなさそうな拍手。
そして電気がついた。
「結構あっさりだったね~。
せっかく翠くん捕獲しようとしたのに失敗しちゃった~。
ははははは~」
現われたのは、何処までも赤銅色。
七瀬周涅だったんだ。