シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「何食わぬ顔で元の立ち位置に戻っているけれど、君がしでかしたものは、無かったことにする気なのかい? 出来ると思ってるのかい?」


赤銅色の瞳にちらちらと揺れる光。


それは怒りにも似た嘲弄。


「君はまだ"如月煌"として、何も無かったかのように…今までの甘ったるいぬくぬくとした世界に馴染んでいられると思っているんだ?」


何があっても揺れないと思っていた俺なのに、出会い様で痛い処を唐突に突かれ…心臓が不穏な音をたてた。


「蛆まみれの畜生が」


どくん。


それは俺が瓦解する…予兆のように。


「"大丈夫だよ、戻っておいで"…皆の優しい言葉に隠された心、それは本当に言葉通りだと思うの? 愛情だと思うの?

はっ!!! そんなのは良くて憐憫さ。哀れみ。それは"救い"じゃない。そんなのが欲しいんだ、ワンちゃんは。ははははは~」


どくん。


喉が無性に渇く。


アワレミ?


――あんたのこと大好きだってこと、信じなさい!!!

――今更、だ。


「誰が何の権利を持って、人を許すことが出来るの? 嫌な真実をなかったことにするなんて、本当にそんなことが出来ると思うの?

罪は罪。罪は永劫…消えはしない。贖いなんてただの自己満足」


どくん。


ジコマンゾク?



「誰かの人生を勝手に狂わせておいて、平気で虫けらのように人の命を奪っておいて、それで自分は安穏と生きようとするんだ? それが許されると思ってるんだ? 本当に…"畜生"の考えだよね」


どくん。


ニンゲンジャナイ?


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