シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「そういえばワンコ、どうして此処に居たんだ?」
今思いだしましたとばかりに、小猿が訊いてくる。
「ああ、実は七瀬に会いたくて…」
それだけじゃなく、朱貴にも――
「紫茉に…何の用ですか?」
それは警戒というより、怒りだ。
「い、いや…お前が心配するようなもんじゃねえから」
「僕が何を心配していると言うんですか」
「い、いや…俺、何も見てねえし安心して、な」
「何を見たと言うんですか。何を安心しろと言うんですか」
何だろう、言えば言うほど…追い詰められている気がするけれど。
此処は小猿にヘルプを…。
「な、なあ…久しぶりに会ったな…」
おい、小猿!!!
俺の危機に…何暢気に桜口説いてるんだよ!!!
何だよその"もじもじ"は!!!
お前が振った話題なら、責任とって付き合えよ、お前も!!!
「何か…勘違いしてませんか」
詰め寄る朱貴に――
"勘違いじゃねえだろうよ"
"あんなすごいキスぶちかましておいて"
など、俺が言えるわけねえだろう!!?
何だよこの迫力。
俺、緋狭姉に威嚇されている気分なんだけど。
「葉山…何してた?」
このアホ小猿!!!
俺達が暇で遊んでいたとでも思ってるのか!!?
しかし桜は、いつもの如く全然相手にしていないようで、その横を通り抜けてテレビをつけたんだ。
びよ~~ん。
『流行…とびつき隊ッッ!!!』
ヘンテコな音にまざって司会が叫ぶと、スタジオのゲスト全員、両手で『T』の文字を作って、中継が開始される。
何だか横浜のビルが映っている。
これは芹霞がよく見ていた中継番組に違いねえ。
いつも見ていた番組なんだが…。
何だよ…これ。
そんな時、小猿が言ったんだ。
「うわっ…小さいけど、音…する」
やはり小猿もそうか。
「微かだけど…するな」
俺も聞こえるんだ。
兆候(シグナル)のような超高音。