シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「何で音が小さいんだろう。朱貴のせいか?」
ちらりと朱貴を見たら、朱貴は腕を組んでいて。
とりあえずは、七瀬の話題は通過してくれたらしい。
「……音?」
「ああ、こう脳味噌を掻き混ぜるようなキーンっていう高い音。朱貴は養護教諭なら…ほら、聴力検査の一番高い音を更に強く高くしたような…」
「そうそう。あれ…俺やなんだよな、あの後鼓膜がじんじんして」
「おう、お前もそうか。実は俺もそうなんだよな。だけど皆は平気で」
何だか小猿と親近感。
「動物……」
うるせえよ、桜。
「超音波の周波数を耳で拾っているようですね」
今更だけど、朱貴は…七瀬が居ないと口調が丁寧だ。
だけど――
「やはり――…
"畜生"特有の脅威の聴力…」
失礼なのは変わってねえ。
お前、小猿だって猿と認めてるようじゃねえか。
「その…"脳味噌を掻き混ぜるようなキーンっていう高い音"は、何処で聞こえたんですか?」
朱貴の問いに、小猿は答えた。
「俺は…赤坂。停電だって電車が止まって、仕方なく地上に上がったらサカス付近で、歩いていたらで酷い音がワンワン聞こえてきたんだ。走って六本木に抜けたらまたワンワン鳴り響いて、もう動くのが出来なくなった。ワンコはどうだ? ワンワン響いたか?」
お前、それ…嫌味かよ。
軽く睨みながら、俺は言った。
「桜、テレビで芹霞を見たのはどのあたりだ?」
「赤坂に入る手間だ」
「だったら、小猿と場所的に同じだな。
俺も赤坂から六本木付近だ」
何か…あるんだろうか。
朱貴は険しい顔をして考え込んだ。
そしてテレビの画面を見つめると…
何かに思い至ったように、その瞳を見開かせた。
そして――。
恐ろしい程低い声で…
「――電脳世界側から
潰していくつもりか。
――結界を」
そう言ったんだ。