シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「何かが…動き出してるな」
蓮の金の瞳が剣呑な色に覆われた。
蓮も…子供2人も、同様に瘴気は感じたらしい。
「折角…平和になった場所なのに…。
何より久遠様は此処を大事になされているのに」
「蓮」
声を掛けたのは司狼で。
「いいじゃないか、また血に染まっても」
歪んだ笑い。
"血"
よからぬことを予感しているというのか。
「退屈すぎたんだよ、この土地。
少しぐらい…僕に遊ばせてよ?」
好戦的に輝く…危険な瞳。
それは…以前見たような、"戦鬼"の顔。
「な、旭?」
「きゃはははは~」
続いて旭も笑顔で呼応する。
「何が起るの、暴れていいの?
きゃはははは。愉しみ~」
「そうだよな~」
「ぞっとするね…」
遠坂がぼやいた。
「子供の無邪気な笑みって…残酷だよね」
その残酷な子供が集う夢の園で、
何が起ろうとしているのか。
その時、鐘(ベル)の音がして。
「あ、時間…それも10分前だ。珍しい、久遠様がきっちりと時間を把握しているなど。それ程、あの久涅と2人で話している時間が苦痛なのか。しど…いや、凜。お前も来い。あと10分でテレビ局から言われていた中継時間が来る」
ああ、全国放映は免れないのか。
今だ鳴り響くヘリ。
此処は…複合施設に生まれ変わったとはいえ、隔離地区。
此処で何が起っても…簡単には外界に逃れられない。
それを狙われたのだとすれば?
ナニヲオコソウトシテイル?
「血が流れない事態だけを願うよ…ボク」
だけど…
俺は感じている。
一瞬感じたあの瘴気。
あれは――
そうあの気配は――
前にも一度経験している。
そう、横須賀港で。
この場所で"あれ"が来たら…。
俺は…
握った拳に力を入れた。