シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
・予感
****************
池袋から首都高に乗ったボンドカー。
もう外は真っ暗で、流れる灯が目に痛い。
運転しているのは玲くんではなく、クマ男。
女泣かせの色男ジェームスボンドの流麗な車を、毛むくじゃらな大柄クマ男が運転するのは、なんというミスマッチな光景だろう。
ああ…ボンドカーが泣いている。
恨めしいと泣いている。
しかし後ろから見ても、迫力ある体毛だ。
腕まくりした腕からふさふさ、ふさふさ。
何だか気持ちよさそうだ。
こんなにふさふさ…本物なんだろうか。
桜ちゃんみたいに"ツケ毛"ではないんだろうか。
顔にあるのも…ヒゲという種類の体毛という名のツケ毛ではないだろうか。
実はマジックテープでぴりって剥がせられるんじゃ?
気になったら止まらない。
あれは本物か、偽物か。
堂々巡りの疑問を持つくらいなら、いっそ直ぐに確かめてみよう。
あたしは身体を伸して…
「イデッッ!!!」
「芹霞、毟らないッッ!!!」
車が蛇行運転を始めると同時に、慌てた玲くんに制された。
顔の"体毛"は本物らしい。
だったら…髪の毛は…。
「芹霞、大人しくしてようね、三沢さんの毛は真実の"野生"だから」
「がはははは。お嬢ちゃん、俺は昔から毛の成長が早くてな、これでも朝ヒゲ剃っているんだが、午後になればこの通り」
何と!!!
あたしは、玲くんのすべすべとした頬を見つめた。
「ん? どうかした?」
「玲くん、おヒゲというものは?」
そう聞くと、玲くんは――
頬を赤く染めて俯いた。
池袋から首都高に乗ったボンドカー。
もう外は真っ暗で、流れる灯が目に痛い。
運転しているのは玲くんではなく、クマ男。
女泣かせの色男ジェームスボンドの流麗な車を、毛むくじゃらな大柄クマ男が運転するのは、なんというミスマッチな光景だろう。
ああ…ボンドカーが泣いている。
恨めしいと泣いている。
しかし後ろから見ても、迫力ある体毛だ。
腕まくりした腕からふさふさ、ふさふさ。
何だか気持ちよさそうだ。
こんなにふさふさ…本物なんだろうか。
桜ちゃんみたいに"ツケ毛"ではないんだろうか。
顔にあるのも…ヒゲという種類の体毛という名のツケ毛ではないだろうか。
実はマジックテープでぴりって剥がせられるんじゃ?
気になったら止まらない。
あれは本物か、偽物か。
堂々巡りの疑問を持つくらいなら、いっそ直ぐに確かめてみよう。
あたしは身体を伸して…
「イデッッ!!!」
「芹霞、毟らないッッ!!!」
車が蛇行運転を始めると同時に、慌てた玲くんに制された。
顔の"体毛"は本物らしい。
だったら…髪の毛は…。
「芹霞、大人しくしてようね、三沢さんの毛は真実の"野生"だから」
「がはははは。お嬢ちゃん、俺は昔から毛の成長が早くてな、これでも朝ヒゲ剃っているんだが、午後になればこの通り」
何と!!!
あたしは、玲くんのすべすべとした頬を見つめた。
「ん? どうかした?」
「玲くん、おヒゲというものは?」
そう聞くと、玲くんは――
頬を赤く染めて俯いた。