シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「芹霞!!!」


「がははは!!!『白き稲妻』が手込めにされた町娘になっとる!! 惚れた弱みだな。どうだい、嬢ちゃん。毛はあったか?」


「う~ん、そんな感触ないし、車内も暗くてさっぱり判らないし。けどもういいや、玲くんのお肌すべすべして適度にしっとりしてて、触ってるととっても気持ちイイんだよ。ふにふにとした贅肉はなくてちょっと堅いけど、ぬくぬく具合も最高で、ほっぺですりすりして"ぎゅう"したくなっちゃう。でも流石に我慢しておくよ。ふふふ、え~い、沢山触っちゃえ!! コチョコチョコチョ…」


「お前さん…人前で凄いことを平気で言うな。本当に女か?

なあ嬢ちゃん。実は俺もこのヒゲを落とせば『白き稲妻』並にイケメンで「笑い声たてぬとは、お主もやるのう? これならどうだ、玲くん!!! コチョコチョコチョ…」


「え、嬢ちゃんまるでスルー? 眼中外!!?」


「芹霞!!! だから、そんな風に怪しい手の動きしないで!! それじゃなくても色々僕、我慢しているのに、変な気起こしてしまったら!!! ああ、そんな際どい処まで侵入してこないでってば!!!」


「がはははは!!! 嬢ちゃんがお前さんのどの"際どい処"を攻めているのか多いに興味はあるが、お邪魔虫の俺は消えようか?」


「笑い事じゃないよ、三沢さん!!!」


「お前さんの望んだ"惚気"にあてられてる俺の身も考えろ」


「三沢さん!! 男なら判るだろ、この状況…芹霞、やめて、お願いだから!!!」


「がはははは!!! 後部座席に嬢ちゃんと座ったのが運の尽きだな。諦めろ」



玲くんはあたしと一緒に後部座席に乗り込んだ。


あれだけ運転席と助手席に拘っていたのに、どうしたものかと玲くんに聞いたら、"嫌な予感がするから"のひと言。


嫌な予感…。


あたしは奇怪な塔の前で、クマ男から聞いた話を思い出す。



――上岐物産の社長は10年前、娘を不慮の事故で亡くした。



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