シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
あたしも玲くんも、皆が皆…"エディター"たる上岐妙を見ている。
玲くんが嫌っていた"エディター"。
玲くんはあたしとの仲を、"エディター"に誤解させてまで…拒絶していたんだ。
そして煌が彼女の夢に潜り、偽りの玲くんを置くことで…そこから先、あたしは"エディター"を見た記憶はなく。
その彼女が、既に死んでいたということが信じられなくて。
それは玲くんも同じだったらしい。
――事故ってどんな?
玲くんの質問に、クマ男は苦笑した。
――いつの間にか家から居なくなっていた娘を捜し回っていた社長が、闇夜に転がっている娘を見つけた。頭蓋骨が…割れ、中の脳味噌が"何か"に食われていたらしい。
飛んでもないことを言い出した。
――妻は病弱でもう子供が出来ないと判っていたから、それはそれは…その一人娘の溺愛ぶりは凄まじく、家から出さないほどだったようだったが…。
あたしは玲くんと顔を合わせた。
――三沢さん。今、上岐社長には18歳の一人娘が居る。それは黄幡会の"エディター"たるものをしているはずだけれど。
――黄幡会のトップは…黄幡家の者だということを知っているか?
あたし達は頷いた。
――黄幡家のことは何をどう調べても何一つ判らない謎の家だ。何故宗教家になったのもいつからなのも不明だ。宗教法人として登録された情報を正とすれば、創立されたのはその少し前あたり。上岐家と黄幡家は遠戚らしく…一縷という娘を預かっていたんだ。
一縷!!!
――そして10年前、絶望の底に沈んだ社長を救ったのは黄幡会。
クマ男はそう言って。
――その時から、上岐社長は狂信的となり多額の献金を黄幡会にし続けている。その"感謝"の形が、果たしてどんな理由によるのかは謎のまま。そして…周囲の者誰一人として、一人娘が死んだことは知らなかったんだ。
――どういうことだ?
――それは、今に至る娘がいたからだ。俺だって、今の娘の存在も知っているさ。数ヶ月の入院をしただけで社会に復帰できた…というのが表向き。だが、当時を知る側近を脅したら、オフレコということで教えてくれたよ。
そして言ったんだ。
――娘の頭部…顔に至るまで完全に破壊されていた。だから今の娘は、違う娘だと。それに今の娘は…いやにおどおどしすぎていて、以前のような"高慢"さが無くなっていると。
上岐妙は…"高慢"な少女だったのか。