シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
中継は座談会から始まるらしい。
場所は時計台前広場。
場所を指定したのは久遠だと聞く。
いつも、気づけば久遠はこの場所に佇むことが多い。
――芹霞がこの場所が好きだから。
この時計台の時計は、複合施設にする際、俺の指示でからくり時計にした。
――芹霞がそういうものが好きだから。
俺も久遠も、同じ穴の狢(むじな)だ。
時計台の前の広場にセットされたテーブルと椅子。
そこに久遠と久涅がついた。
向い側に…司会役だとかいう、先刻の女がマイクを持って座る。
中継前にこの女はぺらぺらと自己紹介をしていた。
若林杏奈24歳、ミスK大出身の売れっ子アナウンサーらしい。
TBS所属4年目の今は恋人募集中…聞いてもないことを喋った。
それは明らかに…久遠や久涅に向けられていた。
夜目でも目立つ存在感の2人。
何より久遠は元来の壮絶な美貌に加え、
その瞳の色と合うような瑠璃色の――…………………。
久遠…。
お前何処の成金ファッションモデルだよ。
お前が着たらただの成金ホストだろうが。
そうした感想を呑み込んでいた屋敷内。
屋敷を出たら、その上に裾の長い…白と藍色のマーブル模様の毛足の長い毛皮まで着ている。
この寒空、観客は身を縮こまらせて震え、俺ですら蓮の薄いコートを羽織っているだけの状態なのに、久遠は一人ぬくぬく温かそうだ。
この毛並みはフェイクではない。
独特の量感とゴージャス過ぎる雰囲気。
1人だけ世界が違う。
これで似合わなかったら"成金はお前の方だ、趣味が悪すぎる勘違い男"と大笑いしてやりたい処だが、そんな贅沢華美過ぎる格好がよく似合う上に、品格まで漂わせるのだから、俺の忌ま忌ましさは強まるばかり。
こんな服、"非常識の塊"たる久遠しか着こなせない気までしてきた。
"アレス=イオア"、何ていう服を久遠に与えた?
久遠は、この格好を芹霞に見せたくて、ずっと外で待っていたというのか?
こんな格好で待ち構えられていたら俺なら引いてしまうが、芹霞は引かないという自信でもあったんだろうか。
どの辺が?
良くて――
――久遠、毛、毛、毛…。
『ケケケ』と呟きながら、ふさふさの毛を毟ろうとするに違いない。