シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
予定では、そろそろゲストのZodiacが現われてもいい頃だったが、その気配はなかった。
視界の端で用意されたスクリーンは2つのまま、一向に準備が進む気配はなく。
あのスクリーンでどう演出する気なのかも判らぬけれど、3つ揃えばきっと華々しいものとなるのだろう。
関係者と思われる者達が携帯を取出しているが、首を振って両肩を竦めている様が見て取れた。
携帯が…繋がらないのか?
俺達が初めてこの土地に足を踏み入れた時、携帯を初めとして…電波異常がおきていた。
まさか同じことが…起きているわけはないな。
少なくともテレビは回っているのなら、電波は正常だ。
"電脳世界に気をつけろ"
どうも俺は、あの言葉を深く考えすぎてしまっているらしい。
それにしても…。
何だろう、トラブルでも起きているのだろうか。
予定ではZodiacも交えて、"約束の地(カナン)"を案内するはずだったが。
やがてADがカンペを出した。
『スクリーンの一部が未到達。更にZodiacと連絡つかず。ここで座談会引き延ばすか、KANAN案内に入って』
スクリーンはまだしも、Zodiacが連絡つかずか。
電話が通じないのなら、彼らも慌てているだろう。
判断を委ねられた若林アナは…不機嫌な久遠の態度に耐えきれないようで、"約束の地(カナン)"案内を選んだようだった。
「ではでは。少しだけ新アトラクションを見せて頂きましょう~」
しかし久遠は顔を背けたままで。
「各務オーナー、新アトラクションは、どんなものですか~?」
「………」
「ええと…新アトラクションの紹介を~」
「………」
泣きそうだ。
その時久涅と目があって、顎でこちらに来いと言われた。
無視したい気はしたけれど、メイドとして傍に立っているのなら仕方が無く。
こっそりと横に着けば、
「これを後のホワイトボードに貼って、此処に持ってこい」
丸めたような模造紙を俺に渡した。