シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
移動式ホワイトボードは近くにあれど…この紙は何なのか。
開いて見ると、それは"約束の地(カナン)"の全貌図。
複合施設に改装する際、俺がよく見ていた地図で。
いや…処処に付け加えられている節があるのは、久遠が俺に無断で増設していた"何か"だろうか。
何を…する気だ?
戸惑っている俺に痺れを切らしたように、突如久涅は笑いながら立ち上がり、
「まずはKANANというものをご紹介しましょう。
全体図を此処へ」
カメラが回っているならば…無視するわけにはいかない。
カラカラカラ…。
地図を貼ったホワイトボードを久涅に運んだ。
一瞬――
一瞥した久遠の身体が震えた気がした。
何だ?
久遠に代わって久涅の口から"約束の地(カナン)"の簡単な紹介がなされ、そして久涅は懐から金色の万年筆を取出し、数カ所に○をつけたんだ。
「――この○をつけた場所に中継を入れられるよう、こういう順序で回ります」
最後の言葉は、完全に独断で。
「え? 予定とは違うコースで…」
若林アナが小さくそう言うと、
「電気の無駄だ」
久涅はそう、意味ありげに薄く笑った。
電気?
何を言い出しているんだ、この男。
関係者皆が狼狽の色を見せた。
機械室に再び中継で入ると言っていたのに、それすら違えた久涅。
あの部屋に何かありそうだと見抜いているはずなのに、そこに行かずに優先した○の場所には何があるというのだろう。