シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
夜空でも確認出来る…電子塔の色は漆黒。
APEXのような円筒状のものではなく、東京タワーとしての原型を留めたままの…ただ闇色に染まっただけのそれは、1つ分の空間を挟んで…同じモノが並んで建っていた。
目の錯覚ではない。
その上空には、何台ものヘリが旋回している。
この奇妙なものを…上空から撮影しているのだろうか。
「予想だけれど…黒い東京タワーは…"輝くトラペソヘドロン"だね」
玲くんの声は堅く。
「あの物質は、僕の力を弾く。あんな風に東京に出没されれば…僕の力は無効化されてしまう」
「え? でも先刻…他の車を蹴散らしてくれたんじゃ…」
「それは…電脳世界で溜めてきた、月長石のおかげだ」
玲くんは挑むような目をあたしに向けながら、バングルにキスをする。
玲くん…。
何でいちいちキスするのかな。
なんか、あたしにされているようで気恥ずかしいじゃない。
玲くんは目を瞑り、手を空に向けた。
静謐なる夜の帳に包まれて玲くんはとても綺麗で。
「駄目だね…コード変換、出来ない。
寧ろ…吸収されそうだ」
ゆっくりと目を開けると、静かに言った。
まるで、予想していたかのように…落ち着き払っていて。
「吸収?」
「そう。僕が解析できない第三の存在に」
「え?」
「この世界に…流れ込んできている。
――未知なる"虚数"が」
そう言うと玲くんは、
「東京で…
何が起っている?」
黒い東京タワーを睨み付けた。