シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…。


この音は、"伸びゆく"塔からの振動なのか。



視界に飛び込む異質な黒い影は、1つだけではなかった。


そこからそんなに遠くない場所で、もう1つある。



一体何だというんだ、あれらは!!!!



「……、………。……、……」



その時、後で何かの詠唱が聞こえた。


振り返れば、朱貴の声だ。


何かの"力"を感じる。


紫堂の力とは別種の力。


力を持ちぬ私は、その感覚をどう表現していいか判らない。


ただ、櫂様玲様のようなものとは違うのは判る。

朱貴や皇城翠が用いていた"符呪"という道具を使ったものとも違うのは判る。


流れる"力の気配"の質が違うんだ。


――次元が。


ぞわり。


底知れぬ力の幅を感じて、私は鳥肌を立てた。


何だ?


言うなれば――

五皇の力を目にした時のような…そんな圧倒的な力。


しかし彼はただ、唱えているだけで。

特に力を発現しているわけではないというのに。


紡がれる言葉は、まるでお経のように、聞いている分には文章としてはまるで意味を成さぬ…難解な音読みだけで構成されたもの。


それはまるで、"音楽"のように流麗な波を描いて耳に届く。


ああ、そうだ。

朱貴のこの力は、久遠の"言霊"に近い。

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