シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「考えても見なさい。あれだけの震動であんな建物が出来て…それでも赤坂TBSのスタジオにて"生番組"たるそれは、何故平然と撮影を出来ているのか」
「え?」
確かにそうだ。
番組の中では…異常がないのが異常だ。
私はチャンネルを切り換えた。
他局も異常がない。
これだけの不可思議なことが東京で起きたというのに、緊急ニュースも流れない。
「どういうことだ…?」
皇城翠が呆然としながらそう呟いた。
「塔から流れる"周波数"が、元々の周波数を上書きして流れ…別映像にすり替えられただけです」
事も無げに朱貴は言った。
「だけどよ!!! 別映像って…生番組だぞ!!?」
煌の言葉に、翠はこくこくと頷いた。
朱貴は…一瞬、言いにくそうに顔を曇らせた。
いつも黙したまま語らなかった朱貴。
今は…助けたという"見返り"か。
キブアンドテイク。
それでも、全てを語るまでには心を許していないらしい。
やがて朱貴は言った。
「テレビの周波数さえ判れば、そこに映像を流すだけで、差し替えられたままの映像にて生中継となりえます」
「「へえ…」」
馬鹿2匹は納得したような声を出したけれど。
朱貴はぼかしたのだ。
生番組の映像を、差し替えるということは…その映像が事前に用意されていなければならない。
中継を取り込んだ生番組ではそれはありえない。
だとしたら、"差し替えられた映像"とは如何なるものだろう。
「そんな簡単に映像は変えられるのか? 視聴者に違和感なく。生の意味ねえじゃん」
「2ヶ月前、神崎芹霞は婚約会見しましたね? しかし映像は書き換えられた」
「…ちっ。嫌なこと思い出させやがって。あれは玲と遠坂が…」
「同じです。紫堂玲は…"コード変換"と呼んでいますが。規定の0と1の配列を組み替え自らの支配下に置くということは、その電波を操る"周波数"を掌握するということ。0と1の配列を"読める"ということは、電波を構成する"周波数"が判るということ。
紫堂玲は、違う周波数を持つものを望んだ周波数に変えることが出来る。その結果、電気そのものを自在に操れる。
ただあの塔から放たれる周波数は…恐らくテレビの周波数に疑似していながら、ある意図でもって、独特の…特殊な周波数を持っています。
それを幸か不幸か…感じ取れる希有な存在が貴方達です」
「それが…あの音?」
煌の言葉に朱貴は頷いた。