シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「人体が感じられる周波数は様々。逆に言えば周波数次第で人体をも操れる。
元々君と翠くんは一定以上の高周波を、聴覚で感じ取れる敏感な"受信者(レシーバー)"のようで、君達が持つ周波数も酷似している。面白い程。今までも相当"同期(シンクロ)"して"共鳴"もありましたね?」
煌と翠は顔を見合わせた。
「ワンコ…」
「小猿…」
ああ、更に親近感を芽生えさせてしまったらしい。
これが"同期"か、"共鳴"か。
周波数問題は別にしても、私にはこの2匹の間には…特殊な関係があるのではないかと思っていた。
煌の蛆を止めた皇城翠。
その出会いは…偶然?
それとも必然?
「先刻の術は、受信者たる君達の周波数を外のものとずらしたんです。"力"もまた…磁場を生むものなれば、周波数を持ちます。より大きな力を持つ周波数を…人体が受信しようとするならば、その周波数に勝るものを与えれば、知覚することは出来ない。
腕に擦り傷が出来た時に足を骨折すれば、痛覚は足だけに向けられる。それと同じ原理です」
ということは。
朱貴の力は――
あの塔の力よりも勝っていたということか?
ああ、2匹の周波数が酷似していると言える時点で、彼は玲様の様な力も持ち得るというのだろうか。
朱貴は…何者なんだろう。
「なあ…テレビ放映だってそのままだし、あの塔は何で出現したんだ? テレビ放映させたいのか? させたくないのか?」
皇城翠が聞いた。
「あの塔は…テレビの周波数に別映像を混ぜ込むだけが目的ではなく、テレビの周波数を通じて、紫堂玲でも解読出来ないコード配列…周波数を増幅させる為の電波塔」
私は目を細めた。
「周波数を受信するものが、耐久出来る一定の強さ以上の共鳴周波数を超えると…破壊されてしまう。例えば硝子など…一定以上の共鳴周波数を浴びせれば簡単に割れてしまいます。周波数は破壊要素たりえるもの。
あの塔は…
既存の磁場コードを変え、そして強い周波数を与えることで破壊する。
此の世には存在しない第三のコードを生み出し、周波数を強制的に変えながら、増幅させていくことによって、EMP…電磁パルスという攻撃に特化した衝撃波を生み出せる塔」
"電磁パルス"
私は…金の万年筆を思い出した。