シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


玲様の力が…EMP爆弾となったあれ。


――虚数。


玲様は、突然変異する第三のコードをそう表現された。


そして言われていた。


電脳世界において、


"虚数"が0と1を凌駕していると。


しかしそれは、あくまで電脳世界のもので。


「反転したんです」


私の疑問を見透かしたように、朱貴が言った。


「封印が解けてきたから。そしてまだかけられている結界たる封印を解くには、あの塔の力が必要なんです」



それが――


「電脳世界の…多大な、物理的な力が」


あの塔出現の意味。


「しかし力があるだけでは"目的"は達せられない。0と1を解して操れる、紫堂玲を取り込まないと」


「取り込む? 玲に何をさせる気だよ!!?」


「子供です」


――結婚。



「紫堂玲の力を持つ者を多く作ること。複製(コピー)研究は間に合わなかったようだ。不測の事態でも起って、"時期"が早まっているのか」


最後の言葉は小さくて聞き取れなかったけれど。


「複製(コピー)研究?」


私の問いに、朱貴は冷ややかな顔で答える。


「それが紫堂の割り当てられた研究。紫堂玲は次期当主の見返りに、実験体になっていた。それには気づいていないでしょうが」


玲様…。


「だけど子供なんて!!! 

生まれるのに1年はかかるじゃないか!!!」


皇城翠がそう言うと、


「普通でいけばの話。紫堂玲の遺伝子を操作する為には…"特殊な方法"が必要なんです。方法は2つ。それは――」



そこまで言った時。


ブルブルブル。


何かが震えた音がして、翠と煌が驚いて飛び上がった。


それは――


充電中の、翠の携帯からだった。
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