シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
翠が、キーキーと叫んだ。
「どどどどど、どうしよう!!?
周涅に、紫茉を奪われた!!!」
そして悔しそうにその場で飛び跳ねた。
"紫茉はん"
この言い方…何処かで…。
「行かなきゃ…紫茉を助けに!!!」
今にも飛び出しそうな翠を止めたのは煌で。
「待て待て!!! その情報は信用出来るのかよ、小猿!!! 暗号もどきで、こっちをからかって遊んでいるようにしか思えないぜ!!? 緊急性の欠片も感じねえ!!! もし、本家から逃げてきたお前を誘き寄せる為のデマだったら…」
「大丈夫…だと思う。
多分。恐らく。プロラブリー」
Probably(多分)…
"プロバブリー"と言いたいのだろう。
本人は至って真剣だから突っ込む気にもなれない。
多分、判っていないのは煌だけだろうが。
「小猿…一般人なんて、ちょいと脅せばほいほい裏切るもんなんだぜ!!!? 例え"友達"という括りにしててもさ!!!」
「このメール相手は一般人じゃないんだ!!! お前達だから言うけれど、俺と紫茉…仲がいい自称"情報屋"がいるんだ」
「僕は初耳ですね」
「朱貴に言ってなかったっけ? あ、いるんだ、実は。
黄幡一縷のブログ、"CARCOSA(カルコサ)"とか教えてくれた奴なんだ。胡散臭い、関西弁にもならない変な口調をする奴なんだけれど」
朱貴の目がすっと細められ、
私は――
ある男を思い浮かべた。
「聖(ヒジリ)、か」
小猿は驚いたような顔をして頷いた。