シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「七瀬紫茉が…何で周涅に拉致されたのか、その理由を朱貴は知っているんだな?」


周涅に拉致されたことに対しては動じなかった朱貴。


全てに判っていたから…

あんな傷を作ってまで、106も結界を解いていたのだろう。


そう、あんな傷…。


私は目を細めた。


あれだけの傷が…

塞がりかけていたから。


私の記憶では、腕に大きな火傷の痕があったのも…今はなく。


1つの"可能性"を考えた私は――


「俺は緋影に連なる者じゃない」


朱貴のひと言でそれを却下された。


緋影以外にも、回復の早い肉体を持つ人間がいるのか。


「――判った。

その条件を呑もう」


濃灰色の瞳がまっすぐ私に向いて。


横ではまだ、ぎゃんぎゃん、きーきー。


「だから協力しろ」


いつも上から目線の朱貴だったが…やはり七瀬紫茉が絡むと此処まで変わるのか。


それ程、彼女が大事なのか。


正直――

もっと難航するかと思っていたのだ。


それだけ、七瀬紫茉の気配を隠す周涅が周到なのか。

それだけ、七瀬紫茉がおかれた環境が特殊なのか。


朱貴が七瀬紫茉を守っているのは、恋情だけなんだろうか。


何一つ、彼らのことについては判らない。


皇城家の巫女らしい七瀬紫茉。

実の兄に拉致されて、そこから奪い戻すなんておかしい話だけれど。


朱貴の周辺にも、何かが動いている。

私達の周辺にも、何かが動いている。


それは偶然?
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