シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「――…。
いいのか、桜。玲と…早く合流したいだろう、お前は」
私は――少し唇を噛んだ。
「お会いしたくないといえば嘘になります。しかし。櫂様と玲様の…苦境を思えばこそ、桜のただの思慕の念で動くことにより…皆様の必死な思いを無駄にしたくはありません。桜が動いて玲様に接するだけで、多分…玲様は疑われ、そしてそれは行く行くは、櫂様の"死亡"にも疑惑の念がむけられることになります」
「そうか…。坊の安否は私でも判らぬ。白皇…シロが創り上げた"約束の地(カナン)"は一切の情報が遮断される特殊な土地柄。幾ら外面上遊園地に坊が変えたとて、"約束の地(カナン)"に流れた血の結界は消えぬ。
…五皇、シロの領域の効力は…今も生き続けているといえよう。
だからこそ、坊の隔離には向いているとはいえるのだが…だからといって、五皇が動けば必ず疑いの目が"約束の地(カナン)"に行く。
今はただ…闇石の加護があり、坊が立ち上がることを祈るしかない。
新たに次期当主となった玲が、それまで持ち堪えられればいいが」
緋狭様の言葉は、依然謎めいてばかりだったけれど、それでも櫂様を"助けられた"その事実だけで、私からはあえて口を挟むことはしなかった。
恐らく緋狭様は、状況が許す限りのことを私に教えてくれているのだと思う。
それをどう結びつけるか、どう役立てるかは…聞き手の能力にかかっている。
依然危篤的な不穏さは消えていないらしい。
"次期当主"
その立場故の"何か"が、玲様の身に起きているというのか。
私は、きゅっと…拳に力を込めるしか取れる術がなく。
櫂様。
玲様。
だけど。
櫂様が信じてくれと言っていたから。
私は櫂様も玲様を信じたいと思う。
「……あの方達は大丈夫です、例え今がどんなに苦しくとも…打破できる聡い方々です。玲様には…芹霞さんがいますし。
ですが――
煌は…馬鹿ですから。
救いようの無い真の馬鹿ですから」
緋狭様は苦笑した。