シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

俺は…大きな溜息をついた。


「小猿…」


そして言う。



真っ直ぐ――

藍鉄色の瞳を見据えて。


俺は選んだ答えに、揺らいでいなかった。


その答えが最善のものだと…素直にそう思えたんだ。


「俺達の大切な"誰か"は、きっと…七瀬を見捨てることをよしとしねえだろうし、少しくらい"遅れて"登場しても責めやしねえ。

その"誰か"は判らねえけど、俺達の中での大切な奴らはそんな奴らだ。決して薄情な奴らじゃねえ。それは俺達も同じだと思ってる」


桜も…頷いた。


「"誰か"なら、きっと踏ん張ってくれる。

俺達が行き着くまでに息絶えるような…そんな弱い奴はいねえ。


俺はそう信じている」



そして聖を見た。



「折角の無料情報だが――

――…却下。


七瀬救出が優先事項。


俺達に迷いはねえ」



「了解…」


聖は薄く笑う。


そして俺は、驚いて固まっているらしい…小猿の肩を叩いた。

更に驚いたらしく、小猿は高く飛び上がる。



「さあ――


七瀬を助けに行くぞ」



「ワンコ~!!!」


小猿が俺に抱きついてきた。


何だかな…。

情が湧くってこういうこと言うのかな。


見捨てるわけねえだろうよ。

小猿も、七瀬も。


特に七瀬は――

玲や俺の為に、危険冒して…

尚且つ世間知らずな芹霞の女友達だ。


芹霞の百合相手としては大嫌いだけど、

七瀬個人は…嫌いではない。


別に…恋愛要素はないけれど、

人間的に俺はあいつが憎めねえ。


それは小猿も同じ。


だったらさ…


「俺達は仲間だ!!!」


いいじゃん、"仲間"っていう括りにしても。


俺が片手を前に突き出すように差し延べたら、



「おう!!! 仲間だ!!!」


小猿が、俺同様に伸してきた手を、俺の手に重ねた。


俺達はにっと笑い合う。



そして――…。


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