シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
クマ男が感嘆声を上げて、携帯電話にて手配をすると、近くにいたらしい青いヘリはすぐ飛んできた。
あたし達は、開かれた後ろのドアから乗り込んだ。
入り込めば怪しい機械類。
怪しい青い箱。
その中に救急箱があり、治療薬や"にとろ"があるのだけ確認したあたしは、内心ほっと安堵のため息をついた。
玲くんは、この中で手当てできる。
クマ男が広いヘリ後部から、操縦席にいる後輩に声をかけて移動した時、突如それは起こって。
パリーーン。
それは真正面からだった。
1発の銃弾が、フロントを突き破り――
まだ顔すら確認していない後輩の眉間を貫いたんだ。
敵がいるのか!!?
「クマ、どうしよう…操縦できる人が「俺ができる!!!」
そしてクマは操縦席に座って、ヘリを飛ばしたんだ。
そこから先は無我夢中。
ただ――
傷ついた玲くんが、心臓に手を当てる姿を見た時。
それでも必死にあたしたちを生かそうとしているのだと思った時。
本当に死ぬ覚悟なんだということが判った時。
絶対死なせてたまるものかという気持ちと、
そんな姿になってまで守ろうとしてくれている玲くんの愛に、あたしは凄く感動したんだ。
胸が詰まってただ涙が零れた。
べたべた&ちゅっちゅ&とろり以上の…
広くて深い愛情を、あたしの全身で感じ取った時。
あたしは、玲くんの気持ちに応えないといけないという…そんな心地になっていた。
何を拒み続ける必要があるのか。
ここまで愛されて、何が不服だというのか。
妙な蟠(わたがま)りが、すっと氷解した気分だった。
ここまで自分を犠牲にしてあたしを愛してくれるのなら。
あたしだってそれに応えたい。
あたしが玲くんを選ぶことで、
玲くんが幸せになれるというのなら。
あたしは何が何でも玲くんを幸せにしてあげたい。
それが例え、玲くんが結婚するまでの短い期間であっても。
たとえあたしが捨てられて傷つくことになっても。
あたしは、傷つきながらも守ろうとしてくれている今の玲くんを、丸ごと愛したい。
玲くんを少しでも幸せにしてあげたい。
それはクマ男に言われたからではなく。
そう自然と思えるように心に変化ができたのは、
あたしが玲くんを愛し始めたからなんだと…
そう思うようになったんだ。