シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

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薄らいだ景色の中で、誰かが泣いている。


――…ちゃあああん!!!



あたしの名前を叫んでいる。


置いて行かないでと。

忘れてしまわないでと。


激しく泣きじゃくっている。


泣かないで。

泣かないで。


切なくなる胸の内。


あたしはそればかり繰り返して手を伸すけれど、

手は届かない。



――見捨てないで。

――離れて行かないで。


ただ泣き声は響くばかり。



――好きなのに。


――こんなに好きなのに…。



「……か?」


蹲って泣いていたのは幼い少年。


――裏切るの?


詰るような言葉響かせた少年は、顔を上げた。



黒い黒い…闇色の瞳。

ゆらゆら揺らいで、あたしを手招いているように。




「……りか?」



その顔は…。


幼い顔の少年は、見る見る間に大きく成長していく。


漆黒。


何処までも漆黒を纏った…その男は。



あたしは――



――裏切るのか?



ぼんやりとした頭で呟いた。



「久涅?　どうして?」