シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「芹霞?」
一気に――
闇色が薄らいだ。
目に飛び込んできたのは鳶色の瞳。
闇のような"漆黒色"の男はもういない。
代わりに、見慣れた茶色で上塗りされる。
漆黒の色そのものが…
記憶から消えて行く。
「芹霞? 気分悪い?」
視界に拡がる端麗な顔が、
少し横に傾き…同色の髪がさらりと揺れた。
玲くんだ…。
ようやくあたしはそこで、現実を認識した。
「玲くん、元気になったの!!?」
玲くんを"見上げ"ながら、思わずそう叫ぶと。
「お陰様で。あの薬は即効性があるんだ」
ふわりと、そう微笑んだ。
まだ気怠そうだけれど、あたしの顔を"見下ろす"その顔には、確実な生気があって、あたしは嬉しくて堪らなかった。
「僕のことより…大丈夫?
何だか随分魘(うな)されていたようだったけれど…」
夢…。
誰かが泣いていたような気がする。
また悪夢を見たのだろうか。
「大丈夫。ちょっと疲れただ…」
け、と続けようとしたあたしは、
そこで状況を認識して飛び起きた。
「ど、どうしてあたしが玲くんの膝枕!!!?」
最後の記憶では――
あたしは痺れる足を我慢して、
玲くんの頭をお膝に乗せていたはずなのに。
今の状況は――
あたしの頭は玲くんのお膝に乗せられ、しかも片手は恋人繋ぎだ。
にぎにぎ、にぎにぎ…。
外れない…。
何故だ?
何故なんだ?