シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「勘違いしないでね。僕がこういう風にするのは、君が初めてだよ?」
玲くんは…お見通しだ。
「したいと思うのも、君だけだ」
切なげに笑うと、あたしの額に唇を落とした。
「ふふふ、真っ赤っか」
玲くんはそう言うと、鳶色の瞳を細めた。
「想いが通じ合った本物のカレカノとして、こういう日々が延々と続くのであれば…どんなに"幸せ"だろうね」
それは本当に独り言のような小さな声だったけれど。
あたしの耳には、やけに大きくはっきりと伝わった。
玲くんにとっての"幸せ"はカレカノの延長上にあることなら。
――あいつを恋愛という意味で愛すること。
直ぐにでも玲くんに幸せを上げたいあたしとしては、早くカレカノになりたいという思いを強めた。
「だけど…今は、こうして生きた身で君に触れられるということだけで、満足しなきゃね…」
そう言いながら、玲くんは…握った手を持ち上げて、あたしの手の甲を玲くんの頬に擦り寄せ、目を伏せた。
切なげで苦しげで儚げで。
だけど少し幸せそうな…。
――芹霞…。
一瞬、知らない男の声が聞こえて驚いた。
深くて透明で…玲瓏な声。
胸がやけに騒ぐ。
何?
そんな時視線を感じて。
鳶色の瞳が、じっとあたしを見つめていた。
何かを訴えたいように。
何かを恐れているように。
そしてそれを振り切るかのような挑発的な眼差しを向けると、手の甲にちゅっと大きなリップ音を響かせた。
それを見たあたしは…
益々鼓動を早めてしまった。
「僕のお姫様に…永遠の忠誠を。
心からの愛情と感謝を込めて」
唇が触れた肌から、心臓が飛び出そうだ。