シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「おいっ、大丈夫か!!?」


久遠の…珍しく心配げな声が耳に届き、大丈夫だという合図で片手を上げた俺は、俺のことよりも詠唱の続行を優先するよう…手振りで伝えた。


しかし何故か久遠は惑っている。


"早く!!!"



久遠の術に、確かに瘴気を発するものは、忌避の反応を示している。


ならば突き進め。

これくらい、俺は耐えてやる。


そう…目で訴えた。


内部から壊れていきそうな高い音。


悲鳴が出ないのは幸い。


やれ。


早く術を完成しろ!!!


俺は…苦痛に歯軋りしながら、剣を地面に突き刺した。



「五臓の神君安寧なるが故に天地の神と同根なり」


久遠の声が流れた。


これでいい。

そのまま行け。


「天地の神と同根なるが故に万物の霊と同体なり」


音が…薄らいでいく。


不思議と、俺を狂わせるような音は…久遠の声の響きに飲まれていく。


言霊か。


久遠の言霊の力が、久遠自身には無効であっても…俺には有効なのか。


それとも久遠が同時に何か術をかけているのか?


「万物の霊と同体なるが故に」


どちらでもいい。


俺が動けるようになるのであれば。



スクリーンにまた何かが走る。


久遠の声から遠ざかるように、まるで逃走しているように。



「為す所の願いとして…」



俺は突き刺した剣を引き抜き、それを追いかけた。



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