シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そっちの世界とは、どの世界を想像しているんだろうか。
怪訝な顔を向けた私に、煌はにやりと笑って耳打ちした。
――朱貴、ホストなんだよ。
凄く自信満々で。
――やっぱ、可愛がっている奴に、女に媚びている姿は見せたくねえわな。
そして。
――よし。小猿のことは心配すんな。大丈夫。目を隠してやる。
馬鹿蜜柑…。
わざわざ皇城翠の前で宣言してしまうのなら。
――ワンコ、何で目隠しだよ。何で俺、仲間外れなんだよ。
期待を裏切ることなく、キーキー騒ぎ出して。
――例えば。お前の惚れた奴が、恋人になる条件に、他の奴3人に"ちゅう"して胸揉んでこいと言ったとする。
何だ、そのたとえは。
それでどうして翠と私を見る?
――その姿、お前惚れた奴に見られたくねえだろ?
――うん…。
――目を瞑っていて貰いてえだろ?
――うん…。
凄く、不可思議なのだが、
皇城翠があっさりと了承したのだ。
――俺、見られちゃ嫌な処は目を瞑ってるから。朱貴、頑張れ? 何を頑張るのか判らないけれど。
そう朱貴に笑いかけて。
翠と…得意満面な顔で先輩風吹かしている馬鹿蜜柑以外、胡乱な眼差しをしている。
――いやあ、動物には動物しか判らない、本能的な言葉というものがありますんのやな~。
聖の言葉の方が、やけにしっくりときた。
――ま、小猿のことは任せろ。だからお前、飲み過ぎねえようにしろよ。
ぽんぽんとやれに馴れ馴れしく朱貴の肩を叩けば、
――何を?
すると聖が一人爆笑して。
――ま、ある意味…"飲み過ぎないように"には間違いあらへんな。凄く不味そうなあの濁った液体を…。
――ひー…。それ以上口を開くな。
笑い転げる聖と、殺気を放つ朱貴と。
恐らく――
真実を知っているのはこの2人だけで。
馬鹿蜜柑の思考は所詮馬鹿蜜柑なんだろう。
それに諭されるのなら、所詮はその程度だ。