シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
――万物には支軸がある。それを崩せば…鉄も簡単に斬れる。そう、お前は聡いな、センスがある。
緋狭さんの声が蘇る。
対象が"動"でも"静"でも、支軸によって存在できるのだと、僕は緋狭さんから教わった。
支軸をずらすことさえできれば、それは即ち、存在を崩すことになるのだと。
よって問題となるのは、どれだけ早く的確に支軸を探し出すことができるかにかかっており、支軸を破壊できれば、敵が単数だろうと複数だろうと…その姿は保てないと。
鋼鉄であろうと生物であろうと、支軸は必ずあり、それは僅かな力でも破壊可能。
支軸さえ見つけられれば、怖いものはない。
僕はそう教わったんだ。
あの頃の鍛錬を思い出せ。
支軸を早く見つけ出せ。
迫り来る鋼鉄の先端。
芹霞が僕にしがみついてくる。
視力に頼るな。
見つけることが出来るのは――
心だ。
「見えた!!!」
僕は剣を片手で1回転させると、目の前に突き出た凶器の支軸を横から斬った。
鋼鉄は…刃先に抗することなく、
素直に脆(もろ)くも斬り落とされて行く。
崩れていく。
凶器の先端は、瞬く間に平滑化していく。
そして僕は間髪入れず、幾つも、幾つも…落下の軌道に沿う凶器を切り落としていく。
「て、鉄が…あんなにスパスパ…。煌も吃驚だ…」
しかし凶器が去っても近づくのは硬いアトラクションの屋根。
僕は剣を、突出した柱のようなものに叩きつけ、その反動で加速力を削ぐと、方向を転換させた。
落下は続く。