シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
久遠は妙に派手な格好をしていた。


…毛皮?


ふさふさと揺れる、白と瑠璃のマーブル模様の毛皮。


何処の成金だ?

いつも服なんて、シャツを裸に羽織るだけの飾り気ない久遠が、高級そうな服を着飾るのは僕には意外で。


テレビ出演だから?


それも違和感を感じた。


久遠は紅紫色の瞳を、僕の手の中の芹霞に向けていた。

何もいわず、ただじっと。


「大丈夫。怪我はない」


それに対して表情1つ変えず、ただ目だけを僕に合わせてくる。


瞳の色がゆっくりと変わりゆく。


紅紫色から…瑠璃色へと。


冷え切った…どうでもいいような色合いへと。


それはいつものことなれど…気分が良くない。


こうして芹霞を両手に抱いている姿を見ても、久遠の瞳は…嫉妬に赤くならない。


これが櫂であれば、激情の紅紫色になるというのに…僕では"その他諸々"扱い。


芹霞を奪う相手だと…警戒すらしないのか。


以前此の地で。


初めてこうして真っ向から相対した時も、僕は両腕に芹霞を抱いていた。


その時から、ずっと久遠は僕には瑠璃色の瞳を向け続けてきたんだ。


あの時から、僕と芹霞の関係は…何1つ変わっていないとでもいうのだろうか。


今日僕が頑張ってきたことは、報われていないのだろうか。


そんな――

不安に襲われるんだ。
< 928 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop