シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
久遠は妙に派手な格好をしていた。
…毛皮?
ふさふさと揺れる、白と瑠璃のマーブル模様の毛皮。
何処の成金だ?
いつも服なんて、シャツを裸に羽織るだけの飾り気ない久遠が、高級そうな服を着飾るのは僕には意外で。
テレビ出演だから?
それも違和感を感じた。
久遠は紅紫色の瞳を、僕の手の中の芹霞に向けていた。
何もいわず、ただじっと。
「大丈夫。怪我はない」
それに対して表情1つ変えず、ただ目だけを僕に合わせてくる。
瞳の色がゆっくりと変わりゆく。
紅紫色から…瑠璃色へと。
冷え切った…どうでもいいような色合いへと。
それはいつものことなれど…気分が良くない。
こうして芹霞を両手に抱いている姿を見ても、久遠の瞳は…嫉妬に赤くならない。
これが櫂であれば、激情の紅紫色になるというのに…僕では"その他諸々"扱い。
芹霞を奪う相手だと…警戒すらしないのか。
以前此の地で。
初めてこうして真っ向から相対した時も、僕は両腕に芹霞を抱いていた。
その時から、ずっと久遠は僕には瑠璃色の瞳を向け続けてきたんだ。
あの時から、僕と芹霞の関係は…何1つ変わっていないとでもいうのだろうか。
今日僕が頑張ってきたことは、報われていないのだろうか。
そんな――
不安に襲われるんだ。